【魂の退社】稲垣えみ子

あらすじ

28年間勤めていた朝日新聞を辞めたアフロヘアの元記者。
50歳、夫なし、子なし、そして何より「〇〇(という仕事)をしたいから辞める」ではない退職。
大企業を辞める=もったいない と言われながらも、なぜ退職しようと思ったのか、辞めてから初めて、非会社員が社会の枠の外に置かれていることに気づく日々。
レールに沿って過ごす日々への焦りや不安から飛び出した、柔軟性あふれる著者の退職前後の出来事や思いがつまった本。

 

感想

著者は28年大企業に勤め、不自由なく会社員生活を送っていた。しかし、ある時、ふとしたきっかけに「会社を辞める」ということを思いつく。そこから準備を整え退職に至る。
一連の流れが自分と被る。
私は14年勤めた会社を退職した経験がある。14年間のうち、13年と10か月くらいは、退職しようとしたことがなかった。入社1年で続々と同期が辞めていく中、いやなことがてんこ盛りで愚痴ばっかり言ってたのに、辞めよう と思ったことがなかった。
それが、ある時、その時に抱えていた問題のほとんどが、会社を辞めたら解決すると気づいた瞬間があった。天から降ってきたみたいに「辞めたらいいんだ」と気づいた、そんな感じ。で、ひらめいたら、それが一番素晴らしい方法のように感じる。で、家族に、辞めようと思うと宣言。そこから1か月もたたない間に、上司に退職届を提出した。

そして私は退職してから、それまでの会社員生活でお世話になったけど最近あってない人に会いに行きまくった。忙しくてなかなか会えなかった人たちに久ぶりに会えたり、とてもいい時間を過ごせた。そして、失業保険をもらっている間、それまで足を踏み入れなかったような、いろんなところに顔を出すようになった。ネットでつながった人たちとのオフ会や、時間が拘束されるセミナー、誘ってくれた飲み会など、今まで足を踏み入れたことがなかったいろんなところに参加した。

で、しみじみ思ったのが、
なんでもっと早くから参加しなかったんだろう
ということ。

それらの会は、会社員であってももちろん参加できる。現に今私は別の会社で働いているが、それらの会には継続して参加しているし、ますます行動範囲は広がってる。

仕事が忙しいと、ついつい、その枠の中でだけ生活をしてしまう。
なんせ、まずは、そんな時間がない。そして、そんなことに興味を持つ余裕がない。
でも、そうやって過ごしていると、結局顔をあわせるのは、自分の会社の人や業界の人。全然関係ない人とは会話をする機会がない。

例えば、いま私は、同じ年の集まりに定期的に参加している。それは、中高などを一緒に過ごした同窓生ではなく、「同じ学年」というだけのつながりの人たち。だからこそ、様々なジャンルの人たちが多く集まっていて、そこに行かなければ絶対会うことがなかったような人たちが大勢いる。なんせ同じ年だから、いきなりのタメ語で変な壁もなく、会社員としての付き合いじゃないから何の利害関係もない。ただ純粋に友達として、いろんな世界を知れ、いろんな考え方に触れることができる。
同じように、本好きが集まる会では年齢も何もかもバラバラだけど学習欲や収集心が刺激される。

そうすることで、会社員としての自分、親としての自分、女性としての自分など、人としての幅が広がり、器が大きくなっていく感じがする。
会社を辞めると、会社員としての枠が必然的にとっぱらわれるから、枠の外に出ることになって、世間が広がるんだけど、それは会社員でいながらでも、専業主婦でも十分できる。
自分の半径1mの中でだけ生活せず、枠の外に出てみるのもいいもんだ。

決して社交的ではない私だけど、同じような人もいっぱいいるし、全然違う人もいっぱいいる。ポジティブで生き生きしている人の周りにはそんな人が集まっているから、たくさんのパワーをもらえる。

同僚と、いつもと同じ愚痴で盛り上がるその時間を、枠の外の人とあう時間にあてませんか。愚痴を言ってる時間がどれだけ生産性がないのかに気づき、人生が豊かになると思います。

よく読まれている記事

よく読まれている記事

  • ピックアップ
  • Category