【老人力】赤瀬川原平
ビジネス書が続いたり、重い小説を読んだ後には、エッセイを箸休め的に読んだりする。今までそうやって読んだエッセイは女性作家さんばかりだったのだけど、初めて男性作家さんのエッセイを読んだ。
もう、面白かった。
老人力
この言葉から想像されるのは、とにかくマイナスな感じでしょうか。だって老人だもんね。老人に残ってる力って感じですかね。
いや、赤瀬川さんが言う老人力って、全然違うんです。もうね、
「よし、私にも老人力がついてきたぞ、ぐひひひ」って感じ。
基本ポジティブな私ですら、わ〜ポジティブだなーって思うくらいのポジティブさ。
年を重ねて、一番感じるのが、物忘れ。
私なんか、新入社員の頃は、いつの会議でこの人がこんな発言をしたとか結構覚えてる方がだったので、そうじゃない
人はすっとぼけてるんだとばかり思ってた。それが、30歳を過ぎたあたりから、自分の頭の中だけで「あの人にこれを言わなきゃ」と思ってたことだったのか、その人に既に言ったのかよく分からなくなることがしょっちゅうになって、「言ったかもしれませんけどね」と前置きしてから喋り始めることしばしばだった。それがもうすぐ40ですからね。そりゃもう自分が怖いくらいの物忘っぷりですよ。
日々の会話が「ええっっと、どうでしたっけ?」って感じですからね。はぁ自分が怖い。
それが、赤瀬川さんによると、これらは、衰えというより力なんですと。
力。なんてステキ。
まず、あいつもだいぶボケてきたな、という時には「あいつもかなり老人力がついてきたな」と言う。もうそれだけで積極性があるよね。そしてその老人力はエネルギーではあるんだけど、かなり複雑なエネルギーなので簡単には手に入れられない。あ、老人か、かっこいいなぁとか言って5万円払って老人になるというわけにいかない。だって。面白い。
他にも、世間の風潮では、物を覚える、体力をつける、視力ははっきりなどが良いとされてるが、プロ野球では大事な場面で「力を抜いていけ」と言われたりする。老人になれば意識しなくても力が抜けるけど、若いうちは意識して力を抜く。つまり意識して老人力を先取りする。と。
とにかく、老人力ってのは、身につけようと思ってつけれるものでもない。あぁボケてきた、ではなく、「なかなか老人力がついてきたな、うししし」と思うだけでも笑けてくる。 老いを嘆かず笑いに変える。なんでも、どうとらえるのか、ってことだなぁとシミジミ思える本でした。