【飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ】 井村和清

飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 井村和清

自分はもうすぐ死ぬと分かった時、どんな心境になるんだろう。それがまだ若く、自分の子供がまだ小さい時、将来こうしようと思ってる年齢の時に分かったら。一体何を考え、何をするだろう。
著者は、医師として病院で勤務し、多くの患者さんや同僚に頼りにされ、慕われていた。それが、足の痛み、右足切断、そして肺への転移。
医師であるため、どの時も自分の状態を良くわかっています。自分で、あと何か月と分かるんです。
絶望し、全てがどうでも良いと思ってしまいそうな中、決して、生きる事をあきらめているわけではなく、生きたい生きたいと、ほとばしる生への熱い思いを感じる。
でも、それなのに、読後感が非常にすがすがしい。

一人の未来ある青年が、死ぬと分かってから死ぬまでの気持ちが書かれているわけですから、暗い気持ちになったり、生への強い執着に触れてなんだか疲れてしまいそうなものですが、この本を読んだ後は、非常に清々しい。

この清々しさは、いったい何からくるのだろう。

著者である井村さんの文章からは、感謝、思いやり、希望、愛情にあふれています。

両親や兄弟への感謝。
永年の友達への感謝。
今まで携わってきた患者さんへの思い、感謝。
奥さんへの強い愛情。
子供への思い。
子供たちに寄せる希望。

井村さんがかける言葉や、かけてもらった言葉から、日ごろどんな言葉を発しながら過ごしておられたのかが想像できる。

この様な、もうすぐ死ぬという絶望の中での、感謝、思いやり、希望、愛情の根っこは何だろう。

自分の存在に自信を持つこと。
過去を肯定すること。今を受け入れること。
後悔しない今を過ごすこと。
誰かに必要とされていると信じられること。

これらが、井村さんの根底に流れていると感じた。

井村さんの心境になるには、まだまだ精神鍛錬が必要だなぁと思うものの、お金があるとか、今の環境がどうとか、そんな事ではないので、感謝し、思いやりを持つなど、今すぐできる事から心掛けたいと思った。

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