【ソロモンの偽証】 (1事件 2決意 3法廷) 宮部みゆき

クリスマスイブの雪降る夜、中学生が学校の屋上から落ちて亡くなった。少し前から不登校であった事などからも、両親は自殺だと思い警察でもそう処理された。
しかしその後届けられた告発状によって学校は様々なうわさが飛び交う様になる。
真相解明の決意のもと、学校で中学生による裁判が始まる。
あらすじはこの様な感じ。

身の回りで誰かが亡くなる。
ワタシは、自分の祖父母が亡くなった時、それは突然のものでは決してなかったから、もちろん悲しいんだけど心の準備があった。
縁側でスイカを皆で食べて種を飛ばしたなとか、夏休み明けに会った時に、ワタシが黒すぎてビックリされた時の顔とか、色々思い出したが、それは明るい思い出であった。

高校生の時、中学校の先輩が単車の事故で亡くなった。
それは唐突で、昨日まで元気であっただろう人が、しかもおじいちゃんやおばあちゃんとは違う、自分に近い年の人が亡くなるという初めての体験だった。
その時は、その先輩は、見かけるという事はあっても声を掛ける間柄ではなかったこともあってか、こんな若い人でも死んじゃうんだということに、ただ驚いていた。

会社に入り数年経った頃、少し上の先輩が自動車事故で亡くなった。
旦那とも親しかったから、家に遊びに来たり、会社の中では顔を見れば話しかける存在だった。
奥さんが妊娠し、あと数か月で産まれる頃だったから、勝手に名前を考えて、こんな名前どうですか?とか言ったりしてた。そうやって笑ってた人が突然いなくなった。
本当に衝撃で、悲しいとか何か分からない感じだった。
日が経てば会社の中でも冗談を言って笑いあう日常の光景があったりしたが、その、笑っている人を見るだけで、どうして笑えるんだろう?と不思議だった。ふとした時に泣きそうになったりする自分は変なのかと、あまり考えない様に努力をしていた。誤解が無いように言うと、その人の事を異性として好きだったとかそういうのでは全くない。
何というか、急に消えるんだな。とか、死ぬというのは無くなるという事なんだなとか、グルグルといつまでもクヨクヨしてた。

この本の登場人物は中学生たち。
大人しい子だったから、仲が良かったとか人気者だったとか、そういう関係ではないんだけれど、自分たちが知ってる 同じ空間にいた子が死んでしまった。
ニュースで、「中学生の〇〇という子が亡くなりました」と聞くのと、自分が知ってる〇〇くんが亡くなりましたというのは、やっぱり違う。
悲しいとかそういうのの次に出てきたのは、真相を突き止める事。
何故なのか。何故クラスメイトは死んでしまったのか。

登場人物が非常に多いけれど、一人一人の顔が思い浮かぶほど丁寧に描写されている。中学生が裁判というだけで茶番な感じを受けるかもしれないが、中学生だからこその青臭さで真剣。また、誰かが死ぬ話というドロドロさは全く感じない。
3部作で2100ページにもわたるボリュームというのもあって、読むのに時間はかかるが、途中だれる事無く一気に読める。宮部みゆきさんの本の中でも、非常に力を入れて作られたんだろうなと勝手に想像してしまう位、始めから最後まで手綱を緩めない本です。

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