世界銀行の副総裁として、「貧困のない世界を創る」という使命のもと仕事をしていた西水さん。世界銀行とは、日本も戦後に多額の資金調達を受けるなど（返済完了しています）、世界中で貧困や災害などで困っている国があれば、資金やノウハウなどの提供をし、国を立ち上がらせる援助をします。そのために対象となる国の施策や戦略にも口出しをし、国民が幸せに暮らせる世の中を創る努力を日々しています。

国という巨大な何かを相手にし、貧困や災害、争いなど、簡単には解決しない問題に取り組みます。対象となる国も多ければ、同僚も部下も多国籍。強いリーダーシップが求められる仕事です。

この本はリーダーシップがについて書かれている自己啓発本というよりは、西水さんが体験したこと感じたことなどが淡々と書かれています。ただ、スケールも大きければ、自分の仕事の悩みはどれだけちっぽけなんだろうと思える位に複雑な問題です。

西水さんは、副総裁として、強い強い信念を持っています。それは貧困のない世界を創るというもの。
ただ、本当に複雑で大きな問題を前に、自分なら心が折れてしまいそうだと感じます。西水さんの信念を支えているものは、徹底した現場主義に裏付けされた本気。です。
誰かのことではなく、自分ごとにしてしまう現場主義。聞いた話ではなく自分が体験することで自分のこととしてしまう。それに裏付けされた本気。覚悟、腹をくくる、その本気さが感動を生み心を動かします。感動なくては相手の心も動かせません。

西水さんがしていることは、あまりにスケールが大きく、自分とは全く違う世界だと感じるかもしれません。でも、どんな立場でも、例えば仕事なんかしてなくても、リーダーシップを発揮することはできます。誰かとご飯を食べてる時に、「じゃあそろそろ帰りましょうか」と言うだけでもリーダーシップの始まりかもしれません。
タイトルの「あなたの中のリーダーへ」というのは、リーダーであるあなたへ、ではなく、どんな人にも必ずあるリーダーシップを、積極的に発揮しましょうよという意味ではないでしょうか。
自分ができることを本気で情熱を持って取り組めば、きっと色んなことができますよ、という強いメッセージを受け取った気がします。