【生産性】 伊賀泰代
当時、上場企業にいた私は、まじめに一生懸命頑張って仕事をしていた。
指示を受けたことをタスクとして管理し、それを細かくTODOリストにし、リストに線を引いて消していく。終わらないときは家に帰ってからも仕事をする。もちろん手を抜いていたわけでもないし、文字通り、一生懸命していた。
しなければならないことや、社長や上司からの指示をやり遂げるために、細かな改善を繰り返しながら一生懸命取り組むから、与えられたことをきちんと遂行するやる気あふれた人として、部下を率いる身となった。
今から考えると、もったいないよなぁと思う。
一生懸命の方向性。
生産性のことを考えず、根本的な改革をせず、目先にことだけにとらわれている。
それでも、私はまだ、ワーキングマザーということで、残業をしないために様々な改善に取り組んでいた。子供ができてからも残業を続け、平日は子供が起きている顔を見ない生活を続け、ひずみが起きて疲弊してやっと気づいた。それから、残業をしないことを決め、様々な取り組みをした。でも、男性なら、あきらめた奥さんが何も言わなければ、こういう変わらなければいけないキッカケも少ないんだろうと思う。
「残業をしない」ということで、まずしたのが、単純に、とにかく帰る。でも、家に帰ってから23時までパソコンにしがみついていた。ホント、今考えるとバカだよなと思う。
で、自分だけが早く帰るのは気が引けるから、部下たちも残業をしないための取り組みを多々行った。まぁそうなると、他部署の人たちから言われるのが、「あの部署は最近ヒマ」。
それでも結果を出せば誰からも文句言われないんだけど、アウトプットは変わらず単に投下資源が減っただけだから、「ヒマになった」と思われてもしょうがない。
この本は、こういう、一生懸命仕事に取り組んでるのに、その「一生懸命」の方向性が違ってる人たちに読んでもらいたい。
マッキンゼーで17年間務めた伊賀泰代さん。前著「採用基準」では、リーダーだけではなく、家庭でいる専業主婦でさえもリーダーシップを持つべきだという、リーダーシップについて書かれた本。その伊賀さんの第二弾。
海外企業と日本企業の圧倒的な差が「リーダーシップ」と「生産性」
前述の、早く帰るようになった私の部署は、周りの部署の人たちや上層部に、褒められる
どころか、「さっさと帰ってやる気がない」とも見られるようになった。これは、【量】が多ければヨシとする風土にも問題があるし、【量】を減らすだけで【質】をあげていない自分にも問題がある。
生産性とは、得られた成果 ÷ 投入した資源 のこと。
分かりやすい例が、
「自社の採用基準を満たす 10人の新卒学生を採用する」という目的があったとき、何をするか。
多くの企業で行われるのが、
優秀な学生にヒットするように、とにかく大勢に応募してもらおう!ということで、広告をかける。多くの大学で説明会をしよう!と動く。とか、短時間で見極めができるように、面接前にする筆記試験の問題を難しくしよう など、様々な取り組みをすると思う。
でも、生産性が最も高いのは
「最終的に入社する10人だけが応募してくる」ことですよね。これって、結構、目から鱗。うーん。確かにこんな視点では仕事をしていない。
同じように、
会議が多すぎるから、会議時間を短くしよう
残業を減らすために、ノー残業デーを作ろう
とかあると思いますが、これらも全部、【量】をコントロールしているだけで、質はあがっていない。目的は、【質】をあげること。
得られた成果 ÷ 投入した資源
の、【投入した資源】だけを減らしても、生産性はちょびっとしか上がらない。また、生産性の低い仕事をしていると、単純に【投入した資源】を減らしたら、そのまんま【得られた成果】も減ってしまうこともよくある。
会議ひとつにしても、単に「2時間かけていた会議を次から1時間にしよう!!」とするのではなく、やり方を変える必要がある。
例えば、会議の生産性を高めるために、あらかじめ、会議の達成目標を決めて周知する。
よくある会議の議題
・来月の〇〇発売3周年イベントについて
・先月発売された〇〇の販売実績の報告
を以下のように変える。
本日の会議の達成目標
・来月の〇〇発売3周年イベントの、メインの出し物の素案だし
・先月×倍の〇〇の販売目標未達の理由の共有と、今後のてこ入れ策の決定
とすると、会議に参加した人が、
「聞けばいいのねー」とか「とにかく意見を出そう」とか、目指す場所がバラバラにならずに、会議の終わりの着地点を共有することができます。
これだけでも会議の生産性は高まるんです。
皆さんは、生産性を高めよう という視点で仕事をしているでしょうか?
一生懸命しているのに、なかなか成果が出ない人
一生懸命するのがバカらしいと思ってる人
今までと同じことをしていては未来がないと思ってる人
無駄なことをしたくない人
自分の人生を豊かにしたい人
など、多くの社会人・家庭人に役立つ視点だと思います。ぜひ。